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【受験記】モールス符号を覚えないまま挑む第一級総合無線通信士

モールス符号を覚えないまま、第一級総合無線通信士の試験に挑むことになってしまったので、半分笑い話的な受験記を書いておくことにします。

・資格を受験するため

以前にも、航空無線通信士の電気通信術の試験はこうだったよ、という記事を書きました。
その後、いろいろ頑張った結果、第一級陸上無線技術士という資格を取ることができたのです。
簡単にいうと、無線系の資格は、大きく分けて2系統あります。
片方が、技術系の資格。もう一つは、技能系(通信操作)の資格です。
その、技術系の資格の最高峰の資格が、第一級陸上無線技術士
そうなると、取りたくなります、技能系の最高峰。
もう一つは、仕事的な理由です。

というわけで、令和2年度9月期の第一級総合無線通信士の試験を受けてみたわけです。が。
第一級総合無線通信士は、第一級陸上無線技術士を持っていると、技術系の科目は免除になります。
残るは、法規、英語、地理、電気通信術。
法規、英語、地理は選択記述式試験なので、勉強あるのみ。
地理の勉強は少し楽しかったです。
日本及び世界中の港の場所や、航路、無線設備のある場所などについて覚えます。

問題は、電気通信術。
問題が、電気通信術の時点で前途多難な予感しかしませんが。

というのも、この、第一級総合無線通信士は、大抵の場合、通信士としてある程度経験を積んだ人が受けることが多いので、「電信なんて全く初めて!」みたいな人が受けることはあまりないんじゃないでしょうか。
かくいう私は、全くの初めて。電鍵をまともに叩いたことすらありません。
第二級アマチュア無線技士の資格はあるのですが、モールス電信のできる無線機を持っておらず、経験ゼロ。
ということで、この記事は、全くの電信初心者が受験に挑戦するのを生暖かい目で見守る企画としてお楽しみください。

・第一級総合無線通信士の電気通信術試験について

それで、初めての電気通信術の試験の結果はどうだったんだというところですよね。
実は合格発表はまだなのですが、0点なのはわかっています。
電気通信術の試験は、減点法で採点されるのですが、モールス電信に関しては、減点法で全科目-100点満点という最高の不名誉をいただきました。
その場で採点されるので、確定ではないにしろほぼわかります。
ありがとうございました。

まず、第一級総合無線通信士の電気通信術の試験がどのように行われるか、実際に受けてみたので紹介します。
電気通信術といっても、いろいろな試験があります。
内容としては次のとおり。試験順に記載します。
・モールス電信 受信 【和文普通語】
・モールス電信 受信 【欧文暗語】
・モールス電信 受信 【欧文普通語】
・電話 受信 【欧文】
・直接印刷電信
・モールス電信 送信 【和文普通語】
・モールス電信 送信 【欧文暗語】
・モールス電信 送信 【欧文普通語】
・電話 送信 【欧文】

こんなにあるんです。もりだくさん。
一つずつどんな試験だったか書いておきます。

・モールス電信 受信 【和文普通語】

CDプレイヤーで流される和文のモールス信号を聞き取り、紙に書く試験です。
普通語というのは、読めば日本語として理解できる普通の文章ということです。
> 欧文ででてくる暗語というのは、流れてくるのはアルファベットですが、文章になっていなく、暗号のような形になっているものです。
電報形式で流れてきます。
発信者、時間、宛先、などなど、そういうのも決められた形式で順次聞こえてくるわけです。
つまり、電報がどういう順番でどういう内容が送られてくるか、知っていないとだめなわけです。
例えば、発信者の前には、「発信者はこれです」みたいな、特定の記号が聞こえてきます。
それを知っていないといけないわけ。
他にも、改ページなどの符号もあります。
送信受信とも、和文の試験に暗語はありません。

私はどうだったか。
全く聞き取れませんでした。
というのも、「言い訳をすると」試験勉強が思ったよりはかどらず、和文の符号を覚えるまで至りませんでした。
電報形式もまだ覚えていません。
ということで、無限に流れてくる「ツー」と「ト」を、右の耳から左の耳へ見送って、終了です。
受験者が4人しかいなかったので、試験用紙は試験官が手厚く回収に来てくださいましたが、真っ白な試験用紙を渡すのは少々恥ずかしかったです。

・モールス電信 受信 【欧文暗語】

同じく、聞いて書き取る試験。
これも、欧文の電報形式が決まっているので、それを知っていないといけません。
暗語なので、ランダムなアルファベットが5文字ずつ送られてきます。
ランダムな文字列なので、聞き逃しても推測することはできません。
ただ、私にとってはこちらのほうが簡単に感じます。理由は後述します。

アルファベットのモールス符号は、一通りは覚えたのですが、一つ一つはわかっていても、連続で流れてくる符号を次々と処理できるほど一瞬で出てくるレベルまで覚えていません。
覚えるというよりも、言語の一部のように理解する必要がありそうです。
「(音)ツートツート」→「ー・ー・」→「これはたしか、Cだ!」
なんてやってたらおそすぎるわけです。
その間に次の符号がもう来ています。
というわけで、こちらもほとんど白紙。終了です。

・モールス電信 受信 【欧文普通語】

更に同じく、聞いて書き取る試験。
普通語なので、本文は英語の文章になっています。
暗語より、少し速く送信されます。
電報形式は、暗語と同じ。

暗語ができなかったのに、それより速い勢いで流れてくる符号に勝てる訳ありません。
終了です。

・電話 受信 【欧文】

通話表に基づいてアルファベットが送られてくるので、書き取る試験です。
以前のブログに書いた、航空無線通信士とほとんど同じでした。
【受験記】航空無線通信士 電気通信術とは - えるまろぐ


さて、なんで欧文普通語の受信より、欧文暗語の受信のほうが簡単に感じるのか。
理由は、欧文普通語は、文章になっているから、です。
暗語の場合は、読んでも何のことなのかわからないので、受信した文字を書く「マシン」になりきれます。
しかし、普通語の場合は受信した文字が文章になるので、無意識のうちに単語や文章として読んでしまいます。
その間にも次の文字は次々流れてくるので、意識が単語や文章の方に散っている間に、次の文字が来てしまい、聞き取れない、の悪循環に陥ります。
いかに邪念を捨てて、流れてきた文字を書き取るマシンになりきるか。これには特訓が必要そうです。

・直接印刷電信

なんじゃこれ?っていう名前ですが、言ってしまえば、タイピングの試験です。
試験用のパソコンが置いてあり、専用のソフトが起動しています。
パソコンのとなりに、小さなキャンバスが置いてあり、お手紙が書かれたフリップが置かれています。
それをパソコンで打ち込む試験です。
タイプミスは減点にはなりません。
タイプミスをすると、エラー音が鳴って、次の文字に進めない親切設計。
全部打ち終わってからチェックする必要もありません。
時間内に、その文章を打ち込めばOK。
ただし、改行やスペースも全く同じ通りに打ち込まなければいけません。
改行やスペースは、専用の記号で記されています。

モールス電信 送信 と 電話 送信

先程受信の試験で聞き取ったような電報を、今度は自分で送信します。
試験は試験官と1対1で。
机の上に、ヘッドフォン、モニター装置、録音装置、電鍵がおいてあり、それらを使います。
このときは、カツミのEKM-2Bが接続されていました。
私は電信のできる無線機を持っていないため、サイドトーンとかで練習ができません。
後で練習用にEKM-2Bを買おうと思って探しましたが、もう絶版で中古でもなかなか手に入りそうにないです。
電鍵はメーカーはわかりませんでしたが、年季の入った縦振り電鍵がおいてありました。
電鍵は自分のものを持ち込んでもよく、エレキーも使用可能です。
ただし、自分で動作するように接続しないといけません。
他の受験者の方は、全員自分の電鍵を持ってきておられました。
2人はエレキー、もう1人の方は縦振り電鍵を持ち込んでおられましたが、「前回はエレキーで受験した」的なことをおっしゃっていたので、主流はエレキーなんでしょうか。
受験後に考えてみて思ったのですが、1総通の試験は符号の速さがとても速いので、慣れた電鍵じゃないと符号が乱れたりミスを誘発したりして、つらそうです。
次は私も練習に使った電鍵を持ち込めるようにしようと思います。ということで、この記事の執筆時点では電鍵を買っていますので、次の記事で紹介しようと思います。

私は電鍵など持っていなかったので、備え付けのものを使うことにしました。
以下、当日の様子。

試験官「では、電鍵を調節してください。発振器の音量等も調節してください。」
私 (調整方法知らない...) 「このままで大丈夫です。」
試験官「では、用意ができたら始めてください。はじめに、受験番号と氏名を打電してください。」
私 「......和文の符号は全く覚えていないので、打てません。」

まぁなんと恥ずかしい。
この資格を受けに来たのに名前すら打てないですって?
最初は電気通信術の試験は勉強が間に合わなかったので、欠席しようと思っていました。
しかし、私の場合、初日に電気通信術の試験があったため受験票を出さないといけないし、これを欠席して他の科目を受けても大丈夫なのかわからなかったのと、どんな試験なのかという経験のためにとりあえず受験はしようと思って来たのでした。

試験官「えっ。ちょっとまってて。」
試験官「この方、氏名が打電できないそうですが、どうしましょう。」
試験官2 「まぁ、しょうがないですね。そのまま行きましょう。」

試験官「では、そのまま行いますので。お願いします。」

お願いしますじゃないが......。
どうやら、試験時間の5分間は受験者のキー操作を録音しないといけない決まりのようです。

試験官「打てるところだけでも結構ですので、お願いします。」

さて、困りました。
打てるところと言われても、和文の符号なんて「ア」しか覚えていません。
録音が始まり、試験官も黙ってしまったので、まぁ、何でもいいやと思って、数字とアルファベットの符号はなんとか覚えていたので、おぼつかないキー操作で受験番号と氏名をアルファベットで打電しました。
その後は、本当に符号を覚えていなかったので、5分間沈黙。

......5分後。

試験官「時間です。まぁ、符号を覚えていないということなので、仕方ないですね。5分間何も送信しないということで、よろしいですか。」
私「はい」

よろしいですかと言われても、5分間何も送信しませんでした。
続いて、欧文暗語の試験。

試験官「こちらは、大丈夫ですかね。準備ができたらはじめてください。」

大丈夫ですかねと言われましたが、先程の電鍵操作みてたんでしょうか。明らかに大丈夫じゃありません。
受験番号氏名は、和文のときに1度だけ打てばよいようで、もう電報の送信をしていいと言われました。
アルファベットのモールス符号は覚えていましたが、電報形式を覚えていなかったので、無視して本文を打ちました。
半分も送信できないところで、時間いっぱい。
試験官に、「アルファベットの符号は一応覚えたんですね」みたいなありがたいお言葉をいただき、続いて欧文普通語の試験。
まぁ、いっしょですよね。電報形式覚えてないし、符号もすらすら出てくるレベルじゃないし。
ということで、試験官の採点用紙には、「-100」のありがたい数字。

続いて、電話の送信。
こちらは前述のとおり、航空無線通信士のときに受験して合格済なので、楽勝でした。

......


そして、電気通信術の試験が終わりました。
心はズタズタに切り裂かれました。

先に書いたように、受験人数は4名。モールス電信の送信試験のブースは3つあり、4人目の方はもうほかのブースで試験を始めていたため、試験官の方が少し試験について教えていただけました。
電報形式であること、電報特有の符号、改ページの仕方など。
あとは符号を覚えましょうねという優しいお言葉をいただき、丁寧にお礼を言って、その場を去りました。

翌日以降、法規、英語、地理の試験を受験し、試験はおしまい。

試験勉強はまずモールス電信を覚えるところからとりかかったのですが、試験が近づくにつれ、そう簡単に覚えられるものではないことに気が付きます。
こりゃいかんと思って、その他の科目の勉強に切り替えましたが、結構ギリギリでした。
合格発表はまだですが、記述式の試験は自己採点では合格点だったので、無事科目合格していれば、あとはモールス電信に取り組むのみです。

次から、奮闘記でも書いていきましょうか。